映画感想『ミッションインポッシブル ローグ・ネイション』
スパイ映画の敵とは、悪とは。
『ミッションインポッシブル ローグネイション』観てきました。
一言でいうと個人的にシリーズ中では最高傑作だと思いました。
以下ネタバレを含む感想でっす。
まずオープニング。予告編で流れている飛行機にしがみついてイーサンが侵入を試みようとするシーンが冒頭でイキナリでてきます笑
なんだと!!
その後、いくつかのアクションシーンは登場しますが見事にこの飛行機アクションを凌駕する爽快さでした。
またアクション自体がMI:2のようにダレることなく見れたなので単純にハラハラできてよかったです。
あと今回のローグネイションの特徴としてイルサという女スパイが登場します。
この女スパイが強い。イーサンがピンチの時にはこの女スパイが華麗に助けるのです。
そして表情が知的なのが個人的には好み。
あとベンジーが今回重要なポジションなので、でずっぱりなのも個人的にすごく嬉しかったです。
ベンジーとイーサンの友情がアツかったですね。
あといつも通りトム・クルーズはかっこいいです。はい。
さて、前作ゴーストプロトコルの最後の最後で名前だけ登場した『シンジケート』というのが今回のストーリーに大きく関わります。
話が進むに連れて、ん?こいつはなんの目的なんだ?本当に敵なのか?
という感じでサスペンス色も強めであります。
今作の監督がクリストファー・マッカリーさんという人で、ユージャル・サスペクツの脚本の人といえば納得か。
ミッション・インポッシブル含め、スパイ映画を見る時は「敵」の存在をすごく意識して見てしまいます。
ひと昔前のスパイ映画の敵にはその時代性が現れ、ソ連や北朝鮮、イランイラクあたりまではそれら特定の国というパターンが多かった気がします。
しかし最近では敵が「テロリスト」というのが多くなってきました。
現代の戦争が国家間のものでなくなりつつあることと、特定の国を敵にしたらよいという単純な時代ではなくなったためでしょう。
それに今は特定の国を敵として映画を作りにくい世の中です。
テロリストだとどの国の人も標的となり得えるため、誰にとっても他人事ではないリアリティのある恐怖を与えられますから、作り手にとってはすごく都合がいいのでしょう。
特にMIのような王道スパイ映画には観客が納得する悪役が必要です。
これまでMIの敵を思い返してみると、結局敵は身内か、テロリストでした。
しかし今作はテロリストが敵という単純なお話ではありませんでした。
物語が進むに連れて「シンジケート」の全貌が徐々に明らかになっていきます。
簡単にいうと、シンジケートとはイギリスにとって都合の悪い存在を、各国の人材(例えば死亡しているエージェントのようなならず者)をスカウトしてその任務にあたらせ、その障害に対処させるというものです。
このならず者はイギリスの国から資金や人材の援助を受け、任務にあたります。
レーンはそのシンジケートを利用し、人材と資金を得て世界中でテロをおこなっている今作の敵役です。
しかしレーンは悪でしたでしょうか?
これまでのシリーズのテロリストはキメラウィルスをばら撒いて特効薬で儲けることや、世界を全面核戦争に陥れる目的でしたので、敵であり悪でした。
レーンはそれとは違い自分なりの信念をもって世界中でテロをおこしているようでした。
この行動だけみれば、イーサンとあまり変わりませんね。
イーサンも信念をもって殺人を行なうエージェントであり、他の立場からすればテロリストと同じです笑
なのでレーンとイーサンは敵対する関係ではありますが、差はほとんどありません(カメラがあるかどうかくらい笑)。
それにイーサンはもはや体制側でもなんでもありません。むしろ政府からの援助を得ているレーンの方が、CIAに追われてるイーサンよりよっぽど体制側でした。
イーサンとレーンはどちらもならず者組織(ローグネイション)で、どちらにも正義はないが信念があるだけなのです。
今作の敵はレーンでしたが、悪は倫理なき社会システムの腐敗ということでした。
この敵役がイコール悪ではなく、敵対する存在がイーサンとほぼ同じというのはシリーズの中でも新しかったんじゃないでしょうか。
個人的にはレーンにもっと自らの信念を主張する独白シーンは欲しかったなーと思いました。
今作の敵と悪がイコールではないという点と、それ故にイーサンは簡単にレーンとなり得るんだという恐怖がより強調されるかなーと。
続編の製作が既に伝えられておりますが、次の敵はテロリストなのか、身内なのか、今作のような信念あるならず者か、はたまたそれらとは違う新しい何かなのか。
期待して待ちたいと思います。